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円安・円高は買取価格にどう影響する?輸入品・輸出品のリセールバリュー変動レポート

「円安って、何か関係あるの?」

手元のブランドバッグやiPhone、腕時計を売ろうとしたとき、テレビで流れる為替ニュースを見ながらそう思ったことはないでしょうか。実は、為替レートは中古品の買取価格に対して、思っている以上に大きく、そして複雑に影響を与えます。

こんにちは、「リセールバリュー通信」主席アナリストの高坂旬です。証券アナリストとして為替市場と日々向き合ってきた経験から言えば、「モノの値段は通貨の値段と切り離せない」というのは鉄則です。株式市場では輸出企業の株価が円安で上がり、輸入企業の株価が円高で上がる。中古品市場でも、まったく同じロジックが働いています。

2026年3月現在、ドル円レートは150〜157円台という水準で推移しており、歴史的にみれば依然として円安水準にあります。この状況があなたの手元にある「モノ」の価値にどう影響しているのか、ジャンル別のデータとともに徹底的にレポートします。

為替が「買取相場」を動かす仕組み

まず、なぜ為替が中古品の買取価格を動かすのか、構造から理解しましょう。

買取業者がつける査定額は「この商品をいくらで売れるか」の見立てから逆算されます(前回の記事でも解説した通りです)。そして、「いくらで売れるか」は大きく2つの要因に左右されます。

一つ目は新品価格の変動です。海外ブランド品や輸入家電は、円安が進むと新品の定価が上がります。新品が高くなれば、それに引っ張られて中古品の相場も上昇します。たとえば、新品が15万円のバッグが円安で18万円に値上がりすれば、中古品の適正価格も連動して上がります。

二つ目は海外需要の変化です。円安になると、日本の中古品は海外のバイヤーから見て「安く買える」ことになります。円建ての中古品を外貨で購入すると、ドル換算での支出が減るためです。これにより海外からの需要が増え、輸出ルートを持つ業者は「海外に高く売れる」と判断して、買取価格を引き上げます。逆に円高になれば、この効果は逆転します。

この2つのメカニズムは、商品ジャンルによって影響の大きさが異なります。「輸入品として国内に流通している品」か「海外に輸出されて価値が認められる品」か——この区別が、為替との感応度を決める鍵になります。

為替感応度ジャンル別マップ

まず全体像を表にまとめます。

ジャンル円安時の買取価格円高時の買取価格主な理由
海外高級ブランドバッグ・小物上昇しやすい下落しやすい新品定価上昇 + 海外需要増
高級腕時計(ロレックス等)基本上昇(条件付き)下落しやすい定価改定 + 海外需要。中国市場等の外部要因も影響大
日本製レトロゲーム・コレクター品上昇しやすい下落しやすい円安で海外から見て「格安」になり輸出需要が急拡大
iPhone・海外製スマートフォンやや上昇(底値を支える)下落しやすい新品値上がりが中古価格の下限を底上げ
国産家電・国内メーカー品影響は限定的影響は限定的円安でコスト増だが中古市場への直接影響は薄い
金・プラチナ等の貴金属大幅上昇下落ドル建て国際指標に直接連動

円安が強い「追い風」になるカテゴリ

海外高級ブランドバッグ・アパレル・小物

為替と最も直結しやすい代表格が、シャネル、エルメス、ルイ・ヴィトンに代表される欧州高級ブランドの製品です。

2022年3月、円が1ドル=116.80円という5年ぶりの円安水準に達したとき、ブランディアの海外販売比率は前年同期比で約3倍(29.3%)に急拡大しました。海外のバイヤーが「日本の中古品が安い」と気づき、購入数が急増したのです。

同時期、国内の買取価格も急騰しました。

  • シャネル マトラッセ ショルダーバッグ:2022年2月の約45万円 → 同年6月には約66.8万円(約+48%)
  • ルイ・ヴィトン ダミエ柄長財布:同2月の7,500円 → 6月には15,000円(約2倍)

これは単純な円安効果だけでなく、「円安 → 新品値上がり → 中古相場も連動上昇」という二段階の効果が重なった結果です。シャネルは2022年以降だけで国内定価を複数回改定しており、定価改定のたびに中古市場の相場も段階的に押し上げられました。

2026年3月現在、ドル円は150〜157円台で推移しており、これは2020年以前(100〜115円台)と比べて大幅な円安水準です。つまり、現時点でも「円安恩恵ゾーン」は継続中と言えます。ブランドバッグや高級アパレルを持っている方は、この円安環境が中古市場の価格水準を底上げしていることを理解した上で売り時を判断すべきでしょう。

高級腕時計(ロレックス・パテック等)

高級腕時計も基本的に円安恩恵を受けるカテゴリですが、外部要因が絡む点で少し複雑な動きをします。

ロレックスなどの高級時計は2022年まで中古価格が急騰していましたが、2022年後半から中国市場での相場急落が波及し、日本でも買取価格が下落する局面がありました。これはあくまで「中国発の需給変動」という外部ショックが為替効果を上回ったケースです。

一方、為替の観点だけで見れば、円安はプラスに働きます。ロレックスを含む高級時計ブランドは2025年・2026年と定価改定を重ねており、主要モデルで5〜20%程度の値上げが実施されています。三菱UFJ銀行などの調査によると、こうしたブランドの定価改定は「円安による仕入れコスト上昇を転嫁している」側面が大きく、円安環境が続く限り、今後も定価改定が続く可能性があります。

定価が上がり続ければ、中古品の価格も下限が引き上げられます。「高い定価の商品を中古で安く買いたい」という需要が存在し続ける限り、円安は高級時計市場の中古価格を底支えする要因になります。

日本のレトロゲーム・コレクター品

円安効果が最もダイレクトに出やすいのが、海外での人気が高い日本製のレトロゲームやアニメグッズ、アンティーク系コレクター品です。

「ファミコン」「スーパーファミコン」「ゲームボーイ」などの旧世代ゲーム機・ソフトは、海外(特に欧米)でのコレクター需要が年々増加しています。円安環境下では「日本に来て買い付ける」コストが下がるため、インバウンド購入者が増加し、国内の買取業者も在庫確保のために買取価格を引き上げる傾向があります。

専門業者のレトログなどは海外への販売ルートを持っており、希少なレトロゲームソフトには数万円〜数十万円の買取価格がつくケースもあります。2025年6月時点での例として、「レンダリング・レンジャーR2」には232,700円、「マジカルポップン」には81,600円という高額買取が確認されています。

こうした高値水準の背景には、海外需要に支えられた構造があります。円安が続く限り、この傾向は続くと分析しています。

円安がむしろ「複雑な影響」を与えるカテゴリ

iPhone・海外製スマートフォン・PC

一見すると「輸入品だから円安で中古価格も上がる」と思いがちですが、iPhoneなどの量産電子機器は少し異なる動きをします。

確かに、円安によってiPhoneの国内定価は上昇しています。2017年のiPhone X(約11万2,800円)から始まり、円安が加速した2022年以降の値上がりは顕著で、2026年現在のiPhone 17は¥129,800〜という価格帯です。この定価上昇は中古市場の価格下限を引き上げる効果があります。「新品で17万円するなら、中古の前モデルで10万円でも割安感がある」という心理が働くためです。

ただし、iPhoneには毎年新モデルが登場するという構造的な値下がり圧力があります。この「モデルサイクルによる値下がり力」と「円安による価格下支え力」が綱引きしているのが実態です。結果として、円安はiPhoneの中古価格の「下落スピードを多少緩める」効果はあっても、上昇させる力は限定的です。

円高に振れた場合は逆の効果が出ます。新品定価が下がれば中古品の価格も引き下げられるプレッシャーがかかります。2024年春に円高が進んだ局面では、新品iPhoneの割引販売が増え、中古相場の値下がりが加速した事例も観測されています。

貴金属・金・プラチナ(参考として)

買取カテゴリとして見逃せないのが金やプラチナなどの貴金属です。これらは国際市場でドル建てで価格が決まるため、円安になると円建ての買取価格は単純に上昇します。

三菱UFJ銀行の解説によると、円安は輸入物価の上昇要因となり、特に資源や貴金属のような国際商品市況と連動する資産の円建て価格に直接影響します。手元に金製品・プラチナ製品がある方は、円安局面での売却を検討する価値が高いカテゴリです。

2026年3月時点の為替状況と、今後の見立て

現在の状況を整理します。

2025年のドル円は、前半は日米金利差縮小への期待から4月に一時140円台まで円高が進みましたが、その後は反転。年後半には157円台まで円安が加速し、2026年3月現在も150〜155円台での推移が続いています。

各金融機関の2026年予測では、おおむね「前半は150円台を中心に推移、後半にやや円安方向」というシナリオがメインとなっています。みずほリサーチ&テクノロジーズは「2026年後半にかけて1ドル=150円台後半に円安が進展」と予想。構造的な日米金利差が続く限り、大幅な円高転換は起きにくいという見方が主流です。

このことが意味するのは、「現在もブランド品・高級時計・レトロゲームの売り時」が継続しているということです。

円高が進む局面(過去には1ドル=100〜110円台だったこともある)になれば、海外輸出需要が減り、新品定価の改定も落ち着き、中古市場の価格水準は現在より下がる可能性があります。今の水準を「高値」として認識しておくことが重要です。

為替を味方につける「売り時の見極め方」

では、実際に為替を意識してどう行動すればいいか、具体的な方針をお伝えします。

為替チェックの目安を持つ

精緻に追う必要はありませんが、ドル円レートの「大きなゾーン」を意識しておくだけで十分です。

  • 150円超の円安ゾーン:ブランド品・高級時計・レトロゲームは有利。新品定価が高い水準で維持されており、海外需要も旺盛。積極的に売却を検討すべき局面
  • 130〜150円のゾーン:中間状態。商品ジャンルと個別商品の希少性・状態によって判断が分かれる
  • 130円以下の円高ゾーン:輸入品の新品定価が下がる方向。ブランド品・高級時計は売り急がない判断もあるが、電子機器はモデルサイクルの影響の方が大きいため即売りを推奨

「為替感応度の高い商品」を優先して動かす

手元に複数の売却候補がある場合、為替感応度の高いもの(ブランドバッグ、高級腕時計、レトロゲーム)を優先して売却し、為替感応度が低いもの(国産家電、書籍、CDなど)は後回しにするのが合理的です。

新品の定価改定ニュースをウォッチする

シャネルやロレックスが「〇月から定価改定」というニュースが出た際は、改定前の中古市場に一時的な価格上昇が起きやすいタイミングです。新品の定価が上がる前に「現行の旧定価で中古を買いたい」という需要が増えるためです。こうした情報をキャッチしたら、すぐに買取業者へ査定を依頼することを習慣にしておくといいでしょう。

買取業者に「海外輸出ルートがあるか」を確認する

同じ商品でも、海外販売ルートを持つ業者は円安の恩恵をより強く受けているため、買取価格に反映されやすい傾向があります。ブランディアのように「海外にも販売ルートがある」と明示している業者、またはKOMEHYOのように「専門オークションを自社開催している」業者を選ぶことで、為替効果を最大限に活かせます。

なお、複数業者に一括で査定依頼できるおいくらの一括査定などのサービスを使えば、業者間の価格差を短時間で比較できます。特に為替が動いているタイミングでは、業者ごとの対応速度の差が価格差に直結することもあります。

まとめ

円安・円高と買取価格の関係をまとめます。

  • 円安は「新品定価の上昇」と「海外輸出需要の増加」という2つのルートで買取価格を押し上げる
  • 最も恩恵を受けやすいのは、海外高級ブランドバッグ・高級腕時計・日本製レトロゲームの3カテゴリ
  • iPhone等の輸入電子機器は円安が下落スピードを緩める効果はあるが、モデルサイクルの影響が上回る
  • 2026年3月現在、ドル円は150〜155円台で推移しており、円安恩恵ゾーンが継続中
  • 2026年後半も大幅な円高転換は起きにくいという見通しだが、「今の高値水準は永続しない」との認識が重要
  • 海外輸出ルートを持つ買取業者を選ぶことで、為替効果をより多く査定額に反映させられる

リセールバリューを最大化するためには、商品のコンディションや売り時だけでなく、こうした「マクロ経済の動き」を意識することが重要です。為替は毎日動いています。一つの指標として、売却タイミングの判断に取り入れてみてください。